『少女』湊かなえの世界観がリアルで怖すぎる

こんにちは。

今日の1冊は湊かなえさんの『少女』です。

 

『告白』で衝撃を受けて以来、人間の綺麗じゃないリアルな部分を描くこの人の作品の魅力には惹かれつつも気分が悪くなることはわかっていたのでなかなか手を出せず。

本屋でなんども手を伸ばしては止めていた本作にようやく手を出してみました。

 

きっかけはクラスメイトの紫織との会話。

「ねえ、あんたたち、死体を見つけたことある?」

彼女が語る自殺した親友の死体を発見するまでの生々しい話。悲しいね。辛かったね。そんなありきたりな感想を彼女たちは抱かない。紫織の話を自慢のように感じて悔しさすら覚える。

見たい、死体を。いや、紫織が見たのが死体なら、わたしは死ぬ瞬間を見てみたい。

人の死に触れるために、由紀は小児科病棟、敦子は老人ホームへ。

 

この本のテーマは「死」なのかと思って読み進めていたが途中で

「違うのでは?」と思った。「因果応報!地獄へ落ちろ!」というキーワードが物語のあらゆるところで登場するが、こちらが本当のテーマなのではないか?

痴漢の冤罪をでっち上げて金を巻き上げる少女。その少女にとっては大したことがないことなのかもしれないが、それによって何人もの人生が大きく狂っていく。因果応報、地獄へ落ちろ。湊かなえさんは悪人が罰を受けるというようなわかりやすい世界を描きはしない。彼ら、彼女らは淡々と自分の罪の報いを受ける。

人の死をみたいと望む彼女たちの気持ちが僕にはわからない。しかしこういった少女はこの本の中では特別なものとしては描かれない。そういうもの。まるで当たり前のことを言っているかのように彼女たちは描かれる。タイトルが『少女』であるということが表現しているのはそういうことなのかもしれない。