『小説を書きたい人の本』を読んでみた。 やっぱり小説は素晴らしい。
そもそもお前は小説を書きたいのか?何でこんな本を読んでるんだ?
と思ったかと思う。そうなんです。僕は小説が書きたい。
昔から本を読むのが好きだった。
記憶にある限り最初に読んだ本は『ハリー・ポッターと賢者の石』。小学校一年生の時におばあちゃんからの誕生日プレゼントで貰った。「お母さんに読んでもらいなさい」と言われていたのだがこれがなかなか進まない。母はちょっと読むと「遠藤さんのお母さん~むにゃむにゃ」と言いながら寝てしまう。だから僕の初めてのハリー・ポッターには遠藤さんのお母さんが登場するし、今でもハリー・ポッターを読むたびに僕は遠藤さんのお母さんを思い出す。
「お母さんが読んでくれないのなら、自分で読んでみよう」そうして小学校2年生で読み切った。そこには自分が知らない世界が広がっていた。
そこから本にハマった。小学生時代は物語系が多かったけど、兎に角たくさん読んでいました。『ダレン・シャン』『バーティミアス』『ゲド戦記』『シャーロック・ホームズ』『ルパン』『デルトラクエスト』『夢水清志郎』などなど。
小説というところで初めてハマったのは中学2年生の時。陸上部の後輩に勧められて読んだ一冊で人生が変わった。
『アヒルと鴨のコインロッカー』伊坂幸太郎さんの小説を読んだ。それまでは楽しそうでわくわくするものだけが本だと思っていた。文庫の小さい本は大人が読むものだと思って避けてきていた。でも、後輩がそんな大人のものを読んでるのが悔しくて手に取った。読み始めると面白くて一気に最後まで読んでしまった。なんとも言えない満足感が胸に残った。
あの時の読了感が小説好きな自分を作ったと思う。結局そこから大学卒業までの9年間で年間100冊ずつくらいは小説を読んだ。
自然と自分でも書いてみたいなと思い、中学・高校・大学と書いたりもしている。人に見せられるようなものは創れてはいないけれども。
小説の素晴らしさはいくつかあると思っている。
- 別の人生を疑似体験できる。人生はいろいろ経験するには短すぎ!
- 自分の感情が動かされる。良本を読んだ後の読了感がたまらなく好き
- 人生について学ぶことがたくさんある
他にもいろいろあるとは思うけど。つまりは小説は素晴らしいと。小説あんまり読んだことないけど、読みたいって人、僕に相談してくださいな。
想いがあふれて前置き長くなりましたがまとめ&感想です。
天狼院書店(http://tenro-in.com/)という素晴らしくイケてる書店があるのですが。2017年お正月に天狼院書店が売り出していた『絶対に小説家になりたい人のための福袋』なるものを買ったんですね。当時インターンの成果給で結構いい額もらったりでお財布のひもが緩かったもんで。
そんな訳で結構真面目に小説を書きたい人のための本です。最後の章はデビューする方法や、新人賞に応募する際の注意点なんかもまとまっている笑
この本を読むと小説を書くのに必要なのは才能ではなくコツなんだと感じる。
そこまで書きたくないよ、って方にも「へー」ってなりそうな所も多かったので「ストーリー」「描写」の項をまとめたので是非。
ストーリー作成
突発的な事件
小説をおもしろくするにはストーリーを持たせることが必要である。行き詰ったら突発的な事件を挿入するのも一つ。主人公があっさり成功するだけでは読者は引き込まれない。成功したと思ったら障害が。喜んだと思ったら次の悲しみが。そうやって主人公に人間味を持たせて、感情移入させることで読者を引き込むことができる。
とりあえず死体を転がす
小説のファーストシーンは重要。読者はそこから小説の世界に入っていくのでそこが面白くないと読者はその先を読んでくれない。
ミステリーなどでは「とりあえず死体を転がす」と言われる。「どうせ殺人が起きるなら最初に書いて、しょっぱなから読者を引き込んでやろう」ということ。
「外見」「行為」「セリフ」から人物像をイメージさせる
上記3つの要素からその人物をイメージさせる
女は右手のペンを受話器に持ちかえると、左手でダイヤルしはじめた。薬指、中、人差し指の三本が一斉に動き瞬時に番号は押された。しかし、次の瞬間、女は舌を出すとすぐに電話を切った。そして再び左手の超特急ダイヤルがはじまった…
「ペンを持っていた右利きだが、左手で素早くダイヤルした。聞き手と反対で電卓をブラインドタッチする必要のある、おそらく簿記や会計関連の職業のようだ。押し間違えたのは、数字の並びが違うのに、電話を電卓の並びで押してしまったのでは?」という推理が可能。
↑ここまでできるかは分からないですが、行為からだけで何となく人物像がイメージできますよね。
「だから、どうしても来て欲しいんだ」
「ええ・・・」
「何だよ。はっきりしろよ」
「うん、そう・・・ね」
「おい、来るのか、来ないのか」
「うん・・・。だけど・・・」
内容としては無駄にも見えますが、この二人の関係が見えてきませんか?特に女性の訳アリ感が伝わってきますよね?
さまざまな視点
小説で気を付けないといけないのは、今のその場面は誰の目から見ているのかということです。当たり前だけども見えないものは書けません。他人の内面など。
✖少女は悲しんでいた
→ほんとに悲しんでいるのかは内面が見えないので
〇少女は悲しみのどん底にいるように見えた
大きく分けると視点は「一人称」か「三人称」があります。
一人称の場合は主人公と作者が同化しやすくなる可能性が出てきます。三人称では一歩引いた冷静な文章が書きやすいですし、主人公の外見描写などもできるので初心者にはやりやすいかもしれない。
描写のスキルアップ
語るより「見せる」工夫
説明を長々として描写をすると読者は退屈してしまう。できるだけ言動の描写で読者に見せる表現をすることが求められる。
例「すぐに到着した」ことを伝えたい場合
✖もう終着駅についてしまった。あっという間の電車旅だった
→「あっという間」というありきたりな表現で安っぽい
〇もう乗り換え駅に着いてしまった。まだ片方しか眉が書けていない・・・
→電車のシートで化粧していた女性が慌てて電車を降りようとしている様子を表現している。
「セリフ」「描写」「説明」の使い分け
「セリフ」はほぼリアルタイムの状況。目の前で登場人物が喋っていると想像してください。
「描写」は時間をスローに、あるいはポーズキーで止める感じになっています。目の前で話している場面を一度止めて、後ろの壁の様子を表現するなど。その間時間は止まっています。
「説明」は時間の早送りです。「そしてそのまま2年が過ぎた」など。
分量としては説明をできるだけ減らして、セリフと描写が同じくらいの分量、というのが一つの目安です。
風景描写にも感情を盛り込むことができる
もちろん露骨に盛り込むのは良くありません。告白してフラれたシーンで、突然ザーッと大雨が降ってきたという描写。これは滑稽なだけ。
同じ景色を見ていても感情によって見え方が違うことなどを利用して描写する
例:夕方の一本道を歩いている
いつものように、暖かい家族が待つ家へ帰る場合
Aはいきをのみ、しばらく目の前の光景を見続けた。空はもちろん、歩く道までも夕焼けで真っ赤に染められている。寒さの厳しい季節なのに、まるで焚火の近くにいるような暖かさを感じた。もう今頃は家でB子やC男がストーブの傍らの食卓に座って、Aの帰りを待ちわびているのではないか。Aは再び早足で歩きはじめた。
孤独な人間が、これからあてもなくどこかへ行くような場合
Aは目の前の光景に足を止めた。空はもちろん、目の前の道までも夕焼けで真っ赤に染められている。まるで町全体が炎に包まれたかのようだ。「燃えろ、燃えろ」Aはそうつぶやくと再び足を進めた。やがて夕焼けの色が少しどす黒くなり、血に染まったような色に変わってきた。「上等じゃねえか」Aは吐き捨てるように呟くと、足を速めた。
最後に。小説を書く書かないに関わらず面白い本ではあります。
「こうやって小説は書かれているのか」と知ることで小説を読む新しい視点も身について面白いかもしれませんね。