アイネクライネナハムトジーク/伊坂幸太郎

今週は小説WEEEEK!!!2冊読みました。

ちょっと時間つぶさないといけない時間があってたまたま本屋に寄ったら、大好きな作家さんの新刊が文庫化してるではないですか!

社会人になってから大学までの生活水準と比べてそれほど贅沢な暮らしはしていません。唯一、読みたい本は迷わずその場で買うというところは大きく変わったところですかね。それが出来るようになっただけでも社会人になってよかった。

 

では簡単に感想を。

今日は1冊目のこちら

 伊坂幸太郎さん、大好きな作家さんです。ただこの作品今までとはちょっと違う。

伊坂さんって恋愛小説を書かないんですよ。でも今回はthe恋愛小説みたいなアイネクライネから始まるんです。

これは本書の解説で吉田大助さんが書かれていることですが、伊坂幸太郎が恋愛小説を書かない、ということはゴールデンスランバーでは顕著に表れている。

伊坂幸太郎における恋愛キャンセリングシステムは『ゴールデンスランバー』(二〇〇七年十一月単行本刊/新潮文庫)においてもっとも象徴的に作動している。~~~もしも本作が本当にハリウッド映画ならばー大衆受けすることを第一義に作られたエンターテイメントだったならば、主人公の青柳と樋口晴子を直接出会わせるであろう。~~~ところが!二人は出会わないばかりか、彼女には普通に、夫がいる。大阪へ出張している夫と電話でお喋りし、ちまたを賑わせている逃亡犯が元恋人であることも、あっけらかんと二人の間で話題に上る。

言われてみれば確かに。

アイネクライネナハムトジークは6つの短編からなる小説です。

1話アイネクライネと2話ライトヘビーは王道の恋愛小説。大好きな作家の斉藤和義に歌詞を書いてくれと言われて、「作詞はできないので小説を書くことならば」ということで書いた短編が広がってできたのが本作。

題材は恋愛小説だが伊坂ワールドは健在。癖の強いキャラクターがそれぞれの信念をもって生きている世界は魅力的だ。伊坂幸太郎の凄いと思うところは「一見普通に見える主人公も実は結構変わっている」というところ。主人公の視点もそれを取り巻く人々もなんとなくふわふわしているのは他の人の作品では味わえない心の温かさを生んでいる。

今回の伊坂ワールドでは斉藤さん1回100円のお店が結構ツボ。100円払って今の気持ちを言うと、店主が斉藤というパソコンを叩いて斉藤という歌手の曲の一部を流す。不思議なことにその歌詞やメロディがお客さんの気分に妙にマッチしていて、愉快な気持ちになる。そんなお店があったら僕も行きたいなw

相変わらず登場人物が良いことを言うので一部抜粋。

いいか、後になって『あの時、あそこにいたのが彼女で本当に良かった』って幸福に感謝できるようになるのが、一番幸せなんだよ(アイネクライネ/織田一真)

幸せって案外後になって振り返って気が付くものなのかもしれないですね。それに対して妻の由美がいうのはこんな一言

うまく言えないけど、あの旦那とわたしと子供たちの組み合わせがね、わたしは結構好きなんだよ(ライトヘビー/織田由美)

 こんな関係の夫婦って素敵だな。

恋愛がテーマですが、人生的な示唆にもとんだ一冊です。